その方法は時代遅れ!?最先端の腸活アプローチ法!
毎朝ヨーグルトを食べ、サラダを取り入れている?その腸活はもはや時代遅れです。
快便は腸内環境のバロメーターではありますが、腸内では数多の細菌たちが極めて複雑な営みをしています。
その仕組みを知れば、便秘解消はもちろん、ダイエットやストレス解消、生活習慣病予防、ゆくゆくは健康長寿まで望むことができます。
最新の腸活をお伝えするので、いますぐ腸活知識を一緒にアップデートしましょう!
目次
- ○ 腸活の歴史
- ○ 新たな概念の登場
- ○ 腸内細菌は分業制
- ○ 今、分かっている代謝産物はコレ!
- ・痩せ効果をもたらしてくれる“酢酸”
- ・バリア機能を強化し、さまざまな病気から身体を守る“酪酸”
- ・腸内環境を良好に保つエネルギーをデリバリーしてくれる“プロピオン酸”
- ・リラックスをもたらしてくれる“GABA”
- ・油が材料なのに太りにくい身体づくりに役立つ“HYA”
- ・バランスの取れた免疫力を調整する“EPS”
- ・アレルギーの火を消す“αケトA”
- ・若返りを可能にする人類の夢が集まった代謝物“ウロリチン”
- ○ まとめ
腸活の歴史
結論からお伝えすると、
最初は菌が注目され、やがて菌育へと繋がり、今、注目すべきは菌の代謝物です。
「お通じの中に生命体がいる!」という腸内細菌の発見は、17世紀にさかのぼります。
当時は微生物の存在が知られていなかったため、スルーされてしまいました。
19世紀後半から再び微生物研究が盛んになり、20世紀になると腸内細菌に俄然、注目が集まりました。
腸にはいい働きをする菌と悪い働きをする菌がいて、どうやらブルガリア人が長生きなのは、ヨーグルトに含まれる乳酸菌のおかげらしい。ということで、ヨーグルトブームが巻き起こります。
このブームが今のヨーグルトに対する信頼を下支えしています。
さらに、人の腸内には膨大な数の腸内細菌が棲んでいて、
細菌同士が塊になって腸内にびっしりと群棲していることがわかりました。
その様子が植物の草むら、花畑のように見えることから、「腸内フローラ」と呼ばれるようになります。
健康のためには、とにかく腸内フローラのバランスを整えるべし。という考えのもと、
いい働きをする菌(善玉菌)をせっせと腸に送り込む
“プロバイオティクス”という考え方が打ち出されます。
これを受けて当時、乳細菌飲料やヨーグルトの銘柄が一気に増加しました。
20世紀末になると“腸活“ブームはますます加熱します。
今度は腸内細菌を育てましょうという“プレバイオティクス”という考え方が提唱され、
食物繊維やオリゴ糖を含む健康食品がドラッグストアに溢れかえりました。
その後、“プロバイオティクス”と“プレバイオティクス”のいいとこ取りをして、
どちらの要素も兼ね備える“シンバイオティクス”という考え方もありでしょう、
という提案も登場します。
このように腸活はもはやブームではなく、健康常識として市民権を得ました。
それもこれも、腸内細菌研究が日進月歩で進められてきたおかげです。
そもそも腸に棲んでいる微生物が、全身の健康に影響を及ぼすというのは、
考えてみれば不思議な話ですよね
でも、世界中の研究者のおかげで、腸内細菌のバランス具合が肥満や糖尿病の予防につながったり、うつを改善したり、認知症に何らかの関わりがあったり、
「睡眠の質を上げる」という可能性が注目されたりしています。
「腸内細菌はもはや万能では?」と素人目には思えるくらい、
健康作用が続々と明らかになってきています。
新たな概念の登場
ここ数年、新たな考え方として提唱されているのがポストバイオティクスという概念です。
これは口から取り入れた食品を材料にして腸内細菌が生み出す代謝産物のこと。
代表的な代謝産物は、すでにCMなどで聞き覚えがあるであろう“短鎖脂肪酸“です。
“短鎖脂肪酸”は、腸内細菌が食物繊維やオリゴ糖を餌にして作り出す有機酸のことで、
酢酸、酪酸、プロピオン酸の3種類の物質の総称です。
その働きは、腸の蠕動運動の促進、腸内を弱酸性に保つことで有害菌の働きを抑制、
免疫の働きの調整、生活習慣病の予防など、さまざまです。
いわゆる、“善玉菌“と呼ばれる腸内細菌は、体にいい働きをすると言われてきました。
でも、実はさまざまな健康作用を及ぼしているのは、腸内細菌が作り出す
“代謝産物“の方ではないかということが分かってきました。
国立研究機関法人医薬基盤・健康栄養研究所(NIBIOHN・ニビオン)で
9000人以上の腸内細菌を分析してきた國澤純さんは、次のようにいいます。
「いわゆる善玉菌、悪玉菌というのは何を作っているかで決まってくるので、
菌そのものは善でも、悪でもありません。
私たちの体に良いものを作ってくれて初めて善玉菌と言えます。
細菌だけが腸にいても、働かなければ意味がありません」
となると、ただ腸内細菌がたくさん存在すればいいという話ではなくなりますよね。
毎日ヨーグルトを食べてプロバイオティクス(菌を増やすこと)に励んでいても、
乳酸菌単体では健康効果はほとんど期待できません。
材料となる食物繊維やオリゴ糖そして、食物繊維をエネルギー化してくれる腸内細菌が存在しなければ健康へのいい影響は期待できません。
腸内細菌は分業制
なんとなくのイメージでは、単独の腸内細菌が食品成分を分解して、
代謝産物が作られるように思われがちですが、ことはそう単純ではありません。
実はバトンをリレーで受け渡すようにして、複数の腸内細菌が協力し、
体に有用な代謝物が作られています。
代表的な代謝物である短鎖脂肪酸を例に、代謝物がどのように作られていくかを解説します。
まず、「腸内細菌のエサになぁれ」と私たちが口にする食物繊維は、そのままではエサにはなりません。
糖化菌という腸内細菌に代謝されて糖が作り出され、
その糖が乳酸菌やビフェズス菌といった他の菌のエサになります。
乳酸菌やビフィズス菌は食物繊維を分解するのがちょっと苦手なので、
糖化菌に糖にしてもらったものをエサとして活用しています。
ちなみに糖化菌を含む代表的な食品は納豆です。
ここで疑問が沸きます。食物繊維は炭水化物から糖質を取り除いた栄養素のはず。
言い方は悪いですが、人間にとっては食べ物のカスのようなものです。
その食物繊維から糖を作り出すってどういうことでしょうか?
実は、食物繊維は人の酵素では分解できない栄養素なので、そう呼ばれているだけです。
例えばシロアリはセルロースという食物繊維を分解して糖を作り出します。
我々にはできないことを、シロアリや腸内細菌はできる、というだけなんです。
食物繊維が食物のカスなどというのは人の大いなるおごりです。
腸内細菌によって人間は生かされているといっても過言ではありません。
糖化菌によって作られた糖を
乳酸菌が代謝して、乳酸を
ビフィズス菌が代謝して酢酸を
作り出しています。
そのバトンを受け取った次の腸内細菌が、さらに酪酸やプロピオン酸を作り出す、
という仕組みです。
これにて、体に有益な短鎖脂肪酸の出来上がりというわけです。
とはいえ、誰もが腸の中でこのようにスムーズにバトンが受け渡されるわけではありません。
材料が入ってきても、バトンを受け渡しする菌が不在というケースも多いにあります。
これがヨーグルトやサプリメントを摂っても、体に良い変化が生まれない原因でもあります。
糖化菌が不足していると、食物繊維の分解不足が起こり、
次の菌の乳酸菌やビフィズス菌の働きが悪くなります。
『食物繊維を摂ると便秘をする』
『乳酸菌やビフィズス菌をとっても効果が感じられない』
という場合は、
糖化菌不足の可能性があります。納豆や糖化菌を含む整腸剤をとることがオススメです。
糖が必要なら糖を含む食品をどんどん食べればいいのでは?と思いがちだが、
そう簡単にはいきません。
口から摂った糖は小腸からほぼすべて吸収されてしまい、腸内細菌がたくさんいる大腸には届かないからです。
同じようにビフィズス菌がうまく酢酸を作れなければ、酸っぱいものを食べればいい、というわけでもありません。
口から摂取した酢酸は小腸からほぼすべて吸収されてしまい、大腸には届きません。
腸内細菌のリレーを円滑に進めるためには、
材料となる食物繊維を摂る、糖化菌を充実させる、
プロバイオティクスで乳酸菌やビフィズス菌を腸に届ける、腸内細菌の多様性を保つ、などなど
そんな食生活における工夫が必要です。
そして、食生活における工夫は、その人それぞれにあった方法を選ぶことが大切です。
人生100年時代、健康で若々しく、あなたらしくイキイキと過ごすためには、
腸内細菌と仲良くして、菌の代謝物を味方につけた人が圧倒的に有利です。
今、分かっている代謝産物はコレ!
酢酸、酪酸、プロピオン酸の短鎖脂肪酸トリオは、腸内細菌の代謝物のほんの入り口です。
他にもたくさん腸内細菌の代謝物が発見されていて、早くもサプリメントとして発売されているものもあります。
一方、代謝物は分かっていますが、どの腸内細菌が関わっているか、関わっている腸内細菌が単独なのか複数なのか、
まだまだ分かっていない代謝物も多いです。今後の研究に期待しましょう。
今分かっている、いくつかの代謝物をご紹介します。
痩せ効果をもたらしてくれる“酢酸”
ビフィズス菌から作られる酢酸は短鎖脂肪酸の一つです。
日本人の腸内でも多く作られ、腸内を弱酸性に保ち、有害な菌の発育を抑制するのが主な働きです。
それだけでなく、一部は体内に吸収されて、脂肪細胞に過剰なエネルギーが蓄えられないようにしてくれます。
つまり、肥満を予防する作用も期待できます。
バリア機能を強化し、さまざまな病気から身体を守る“酪酸”
酢酸を材料に酪酸産生菌から作られる短鎖脂肪酸の一つです。
大腸は外界と体内のボーダーラインで免疫の最前線です。
酪酸は、腸の上皮細胞の表面を覆う粘膜を作り出すことで、大腸バリアの強化を促します。
さらに、病原体の排除などに働く、抗体の産生にもひと役買っています。
近年では、酪酸が制御系T細胞という、免疫細胞を増加させることも判明しました。
腸内環境を良好に保つエネルギーをデリバリーしてくれる“プロピオン酸”
プロビオン酸産生菌によって作れる、やはり短鎖脂肪酸の一つです。
酸っぱいような刺激臭がありますが、身体にとっては有用な働きをしてくれます。
主な作用としては、大腸自体を動かすエネルギー源となり、蠕動運動を促すことです。
スムーズは排便は腸内環境を整えるために不可欠です。
そのためのエネルギーを供給するのがプロピオン酸の仕事です。
リラックスをもたらしてくれる“GABA”
アミノ酸を材料にして乳酸菌やビフィズス菌から作られます。
一般的にGABAは、脳の中で作られている神経伝達物質の1種と捉えられていますが、
腸内でも作られている代謝産物でもあります。
心の安定やリラックスを促すGABAの作用が知られていることから、
脳腸相関を説明する1つのピースとも言われています。
油が材料なのに太りにくい身体づくりに役立つ“HYA”
食用油に多く含まれるリノール酸を材料に乳酸菌から作られます。
ただし、これは体外での反応です。
体内では複数の菌が、この“HYA”を作る酵素を持っていることは分かっていますが、
どの菌が“HYA”を作っているのかはまだ不明です。
役割は消化管ホルモンのGLP−1の分泌を促したり、血糖値の上昇を抑制し、肥満を改善してくれます。
バランスの取れた免疫力を調整する“EPS”
日本語では「菌体外多糖」といいます。
ヨーグルトに含まれる乳酸菌から分泌される多糖の総称です。
ギリシャヨーグルトのとろみの正体とされています。
難消化性のため大腸まで届き、食物繊維同様の働きをしてくれます。
また、過不足のないバランスの取れた免疫力の活性化も促します。
アレルギーの火を消す“αケトA”
アマニ油やエゴマ油に豊富なオメガ3系脂肪酸・αリノレン酸を材料にして、
乳酸菌から作られる代謝産物です。
αリノレン酸が腸内細菌によって代謝されて、“αケトA”が作られると、
免疫細胞のマクロファージに作用し、過剰な免疫反応による炎症が抑えられます。
動物実験では、アレルギー性皮膚炎の炎症が改善されることが分かっています。
若返りを可能にする人類の夢が集まった代謝物“ウロリチン”
ナッツ類やイチゴやザクロなどのベリー類に豊富な、エラグ酸というポリフェノールを
ある種の腸内細菌が代謝して作られます。
メカニズムはまだ不明ですが、細胞の活性を高めたり、筋肉機能を改善するアンチエイジング作用が報告されています。
体内でウロリチンを作れる人と作れない人がいるので、サプリメントとしても販売され始めています。
まとめ
・最初は菌が注目され、やがて菌育へと繋がり、今、注目すべきは菌の代謝物
・口から取り入れた食品を材料にして腸内細菌が生み出す代謝産物が大切
・代表的な代謝産物は“短鎖脂肪酸“ 酢酸、酪酸、プロピオン酸の3種類の物質の総称
・腸内では様々な菌が協力して、分業制で代謝産物を作り出している。大切なのは“菌の多様性”
・何か単一の食品を食べて、腸内環境が良くなることはない
・腸内細菌と仲良くして、菌の代謝物を味方につけた人が圧倒的に有利
最先端の腸活アプローチを取り入れて、健康で若々しく、あなたらしい生活を送りましょう!
体質に合わせて腸活の方法は変わるので、まずは気軽にご相談ください!
参考文献:Tarzan No.864 2023年9月28日号
発行人:田島 朗
編集人:麻坂 博史
株式会社 マガジンハウス