スイーツの依存性と健康への悪影響 〜砂糖があらゆる病気を引き起こす〜
老若男女を問わず、甘いものが大好きな人は多いです。駅の周りや繁華街を見渡すと、チョコレート、ドーナツ、ケーキ、アイスクリーム、コーラなど甘いものであふれています。
アメリカでは、砂糖が肥満、糖尿病、高血圧、がんのリスクを高めることが知られ、「新しいタバコ」とまで称されています。
甘い物は本当に健康に有害なのか確かめてみましょう!
目次
- ○ 砂糖の種類
- ○ 砂糖の問題点
- ○ なぜ甘いものをやめられないのか?
- ○ 砂糖の依存性
- ○ 砂糖は脳内麻薬を作る
- ○ まとめ
砂糖の種類
砂糖は甘みのある調味料のことですが、アガベシロップ、メープルシロップ、ブラウンシュガー、そしてキッチンにおいてある普通の白砂糖は、どれも「砂糖」です。
白砂糖を英語でテーブルシュガーといいます。アメリカでシュガーというとこれより広い意味で使われ、甘みのある、単糖類と二糖類を指すことが多いです。
単糖類は分子中に糖の単位が1個だけ存在するものを指します。その代表は、ブドウ糖、果糖、ガラクトースです。白砂糖はブドウ糖と果糖がつながったもので、糖の単位が2個あるので、二糖類と呼ばれます。白砂糖は化学的にはスクロース(ショ糖)といいます。
白砂糖はまさに白い粉で、ビタミン、ミネラル、食物繊維などの栄養素が完全に取り除かれたスクロースという化学物質そのものです。
アガベシロップ、メープルシロップ、ブラウンシュガー、白砂糖など、砂糖を大量に摂取すると、肥満、糖尿病、高血圧、がんにかかりやすくなることが、多くの研究によって示されています。
臨床研究では、健康人が砂糖の多い食事を3か月間続けると、心臓病のリスクが高くなることが示されています。
私たちは砂糖を様々な形で口にしています。卓上の砂糖をコーヒーに入れる、ブドウ糖果糖液糖、はちみつ、メープルシロップ、ブラウンシュガーを食べ物に入れる、など砂糖は日常にあふれています。
砂糖の種類によって血糖値を上昇させるスピードが異なることに注目して、砂糖の種類が異なれば、健康への影響も違ってくるとする主張もあります。
しかし、砂糖の種類や、それに伴うGI値が違うとしても、その違いはわずかです。
白いとか、黒いとか色の違いを主張したところで、あなたが砂糖や果糖を口に入れていることに変わりはありません。
砂糖の問題点
砂糖はショ糖(スクロース)です。ショ糖はブドウ糖と果糖からできている、ほぼカロリーだけの食品です。
砂糖からカロリーを摂ってはいけない理由が2つあります。
1つ目は、砂糖は私たちを太らせるということです。
砂糖はブドウ糖と果糖がつながったものですが、この結合が小腸で切断され、ブドウ糖と果糖となって吸収されます。
ブドウ糖は血液に溶け、血糖となり(血糖値を上げる)、体内で代謝され、エネルギーとして利用されます。
一方、果糖の一部分はエネルギー源として使われますが、大部分は肝臓で処理されるため、血糖値を上げることはありません。果糖のGI値は23とかなり低いため、かつては健康によいと考えられていましたが、のちに脂肪を蓄積し、ヒトを太らせることが示されました。今では、果糖は危険な糖質であることが明らかになっています。
2つ目は、砂糖の持つ強い依存性です。このことは甘いものに目がない人が、あまりにも多いことが証明しています。そこで依存から脱却しようと、砂糖を大量に含んだ甘いものを食べることをやめると、直ちにイライラ、気分の落ち込み、怒りなどの離脱症状(禁断症状)が現れてしまいます。
なぜ甘いものをやめられないのか?
甘いもの、すなわち砂糖や糖質を大量に含んだ食べ物は、生き物のエネルギー源である。このことをヒトは生物進化の歴史の中で学んできました。甘いものへの欲求は、知識というより私たちの本能に深く刻み込まれています。
その証拠に、大人よりも本能に正直である赤ちゃんや幼児は、甘いものを強く欲しがります。
赤ちゃんや幼児ほどではないにしても、私たちもまた甘いものが大好きです。
大好きな甘いものを健康に悪いからという理由で完全に取り除こうとすると、ストレスがかかります。こんな我慢の日々を続けるうちに、ストレスはますます強くなって、ある日突然、限界がきて爆発する。この結果、甘いものをドカ食いしてしまいます。
甘いものとうまく付き合うには、無理のない範囲で現実的な対応策が求められます。
それは、砂糖が摂取カロリーの大部分を占めるようではダメですが、砂糖が酒やたばこのような嗜好品であることを十分に認識したうえで、少量を摂取する。というものです。
肥満の激増や糖尿病、がんなどの慢性病の蔓延で苦しむアメリカの農務省は、
甘いもの由来のカロリーを摂取カロリー全体の10%以下に抑えるように推奨しています。
ですが、これでさえ実践するのは簡単はことではありません。私たちは、知らず知らずのうちに大量の砂糖を口に入れているんです。
砂糖は、サラダドレッシング、パスタのソース、ヨーグルトなど、私たちが全然予測しない食品にひっそりと混入されています。私たちは、知らないうちにかなりの量の砂糖を口にしています。
私たちは普段から砂糖を避けるように意識しなければなりません。
商品表示を見ることも対策のひとつです。
インスタント食品や加工食品には砂糖が大量に含まれるので、これらの食品を避けるようにしましょう。
ただし、健康に有害な砂糖の摂取をやめるのは大きな前進ですが、急にやめると、イライラ、怒り、気分の落ち込みなどが起こってしまうので、要注意。
ただし、一時的に元気を出す、あるいは、頭を冴えさせることが目的であれば、脳のエネルギー源であるブドウ糖を供給する甘いものを摂取するのは得策です。
砂糖の依存性
アメリカ、カナダ、ヨーロッパの科学者たちは、動物を使った実験で、デザートや甘くておいしいものが依存を引き起こすことをいくつもの論文として発表しています。
砂糖の持つ強い依存性を証明したプリンストン大学のバート・ホーベル教授の研究をご紹介します。
ネズミに毎日2~3時間砂糖水を与えたところ、ほんの2~3日のうちに、パブロフのイヌのような条件反射が起こりました。
実験者が部屋に入ると、砂糖水を飲めることを知っているネズミが、興奮し、一斉に砂糖水を取りにカゴの前方に猛烈な勢いで走ってきました。そして実験者が砂糖水の入った容器のノズルをカゴの前に並べると、興奮したネズミは、容器からノズルを引きちぎり、あたり一面は砂糖水でびしょ濡れになってしまいました。
異常行動はこれだけに留まらず、食べ物と砂糖水を同時に与えると、ネズミは食べものには目もくれず、砂糖水ばかりを飲みました。ネズミは1日24時間、ずっと砂糖水を飲み続けたという研究結果があります。
砂糖は脳内麻薬を作る
まず、12時間何も食べずに、しかも朝食抜きという食事パターンをネズミで再現します。そして、次の12時間で食べ物と、10%または20%の砂糖水を飲ませました。
その結果、砂糖水があれば、ネズミはそれをガブ飲みし、代わりに食べ物の摂取量は減りました。
これは多くの女性やある種の男性の食習慣とよく似ています。
朝に飢餓に陥り、それでもなお食事を抜き続け、最終的に大食いしてしまうパターンです。
これがいわゆる摂食障害です。
砂糖は法律でこそ禁止されてはいないものの、依存性の強い薬物です。欧米では、砂糖に依存する人のことをシュガーホリックと呼んでいます。砂糖の摂取量を減らすのは健康のために大変よいことです。ただし、砂糖を急激にやめたり、一気に減らしたりすると離脱症状が起こるので、それを避けるために少しずつ減らすのが得策です。
まとめ
・砂糖を大量に摂取すると、肥満、糖尿病、高血圧、がんにかかりやすくなる。
・砂糖の問題点は、私たちを太らせることと高い依存性があること。
・甘いものへの欲求は、本能に刻み込まれている。
・砂糖を急激にやめると、離脱症状が起きる。
参考文献:それホントに体にいい?無駄?「健康神話」を科学的に検証する
著者:生田 哲
発行所:株式会社 草思社